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zoom RSS かにしのSS「工藤係長の憂鬱」

<<   作成日時 : 2007/03/01 17:52   >>

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かにしのメイドさんズSSです。エピローグ後を想定しています。やや黒め。主人公は工藤係長……というより某先生かな?現在導入のみですが反響次第では続きもあるかも。って……信じちゃ駄目だよ?
「工藤係長の憂鬱」

風祭メイド部隊の朝は早い。
まだ学生たちが夢の彼方にいる時間から彼女らは活発に動き出しているが、さりとて彼女らも一人の人間である。朝からすっきりしゃっきりというわけにもいかない。
未明に電話を受けたとあるメイドさんも、まあそんな一人であったわけだが。
内容を聞き終わって受話器を置いたあと、彼女は大きく溜息をついて一度だけ伸びをする。
「……困ったものですね」
その声は、もういつもの明晰さを取り戻していた。

授業開始の鐘が響く頃。
無事理事長たちを送り出した後、一息ついたメイド長、リーダは窓から学院を見る。
少しずつだけど、変わりつつある学院の光景。
良いほうに変わっていると日々思えるのは幸せなこと、とリーダは思う。
ノックの音。この几帳面な響きは聞きなれたものだ。
「メイド長。工藤ですが」
「あいております。どうぞ」
工藤係長。実務としてはほぼ理事長専属のリーダに代わって、
メイド部隊の指揮を執る中間管理職。
とはいえまだ二十代半ば。
見た目こそ地味だがかなりの美人であることをリーダは知っている。
普段あまり感情を見せることのない彼女だが、ここしばらくはやや憂鬱そうに見えた。
それが今日は、いつにも増して微妙な表情をしている。
「……お耳に入れるべきか迷ったのですが」
「何か、ありましたか?」
「警察から連絡がありまして……坂水が逃亡したとのことです」
リーダは一瞬まばたきしたが、動揺は見せない。
「……そうですか。懲りない方ですね」
「まったくです」
聞こえるかどうかの小さな溜息を二人ともついた後、リーダが係長に指示を出す。
「……我々は校内のことだけ考えましょう。警戒態勢をイエローに上げて下さい」
「抵抗した場合はいかが致しましょう」
「現場にお任せ致します。但し、学生にだけはけして目撃されぬように」
教師や用務員はともかく、学生に無用のショックを与えたくはない。
「承知しております」
一方で、学生に見えぬところであれば相応の対処を認めます、という意味でもある。
「北の海は、さぞ冷たいことでしょうね……」
ぼそりとリーダが言う。
どことなく、うっとりしているようにも見える。
……えーと。
「……ドラム缶を用意したほうがよろしいでしょうか?」
「え?あら?わたし、何か口に出しました?」
真っ赤になってうろたえるリーダ。
「……いえ、私の空耳でしょう」
「はあ、良かった……では、お願い致しますね、工藤さん」
「了解しました」

リーダの元を辞した工藤係長は深呼吸をする。
「……ふう」
彼女は、年下ながら明晰なリーダをとても尊敬しているが。
「正直、たまに怖くなるときもあります」
と独り言をつぶやきつつ建物を出る。
「しかし、困りましたね」
ナイフや縄ごときならともかく、もし武装して乗り込んできたら一般メイドでは不安がある。
「荒事は……あの二人にお願いしますか。暁が学園に残っていれば、もう少し安心できるのですがね……」
とある二人を探しに向かう。この時間は温室か寮にいるはずだ。
ひとりの学生の卒業とともに、暁光一郎は学園を去った。
昔、一緒に仕事したことがある身としては少々寂しくもあるが、時とともに、人も変わる。それは受け入れなければならない。
だけど、この憂鬱は――そう簡単には消えてくれないのだろう。
何処から来る憂鬱なのかは、あまり考えたくなかったけれど。
そんなことを漠然と思いつつ歩いていると、分校寮から出てきた二人に出くわした。
「おや。丁度いいですね。東さんと別所さん、少々よろしいですか?」
「「係長?」」
分校生にはしばしばメイドA、Bと呼ばれている二人。
ゲストの世話と監視役も兼ねる彼女等は今回の対処に相応しい人材である。
東さんはフェンシングの、
別所さんは柔道のそれぞれ達人であった。
付け加えると東さんは陶芸などものづくりや裁縫が得意で
別所さんは掃除洗濯や料理が得意分野である。
「坂水氏が脱走したようです。学院に舞い戻ってくる可能性があります」
へえ、と二人。あまり驚いてはいない。
「石もて追われなお未練があるってか」
「あの方はSとMどちらでもいけるようですね」
ちなみに二人ともプライベートではけっこうきつい性格である。
学生相手の時とは口調からして違った。
「狙っていた生徒にまだ執着している可能性もありますが、彼女等はすでに学外。保護者に警戒を促すのは警察の役目でしょう」
いかに坂水でも、軍隊並みの錬度と噂される八乙女エンタープライズの私設警備隊や、それに類する相手に孤軍奮闘するほど馬鹿ではあるまい。
土地勘もあり、隠れる場所も多い学園周辺に戻ってくることは充分考えられた。
「そういうことですので、もし校内で発見したら速やかに再拘束するように」
「しっかしわざわざ戻ってくるかねえ。よっぽどここの学院が好きなのか、それとも復讐が目的とか?」
「復讐なら我々に、でしょうか?最終的に拘束したのは私たちですし」
「あくまで最悪を想定しての対策です。メイド部隊全員に警戒の徹底を周知しますが、いずれにせよ見つけ次第、貴方たちには現場に急行してもらいます。必要な得物は常に携行しておくようになさい」
「了解でっす」
「殺っちゃってもいいんですね?」
「駄目です。別所さんそのキラキラした目はおやめなさい。東さんも、刺すのは手足にとどめておくように」
「へいへい。まあ天に召されるにはあの人は善行不足ですからね、殺すだけ無駄です」
「残念です。石畳に頭から落せると思ったのに……」

二人と別れた後、工藤さんは一人ごちる。
「さて。私も得物を手入れしておきましょうか。暴発は洒落になりませんしね」
SIG・SG552を磨く空き時間も、憂鬱をまぎらすには悪くない。
「プラスチック弾かゴム弾か……念のため、エクスプローダーとダムダム弾も用意しておきましょうか」
捨て場所に困るような事態は避けたいが、急所を外したつもりが狙いが狂うのも無いことではないし。まあ、いずれにせよ事故は良くあることだ。
「天に召しませっ、と……いけませんね。東さんの口癖が移ったようです」
念のため、やはりドラム缶とセメントは用意しておこう、と彼女は思った。
もしくは、何か埋めても不審に思われないような縦穴を。



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