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zoom RSS 雑記「これが20年以上前の作品とは」

<<   作成日時 : 2007/08/01 20:47   >>

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輝くもの天より墜ち (ハヤカワ文庫 SF テ 3-6)ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア/朝倉久志訳
アメリカでの刊行は1985年だそうな。


裏表紙のあらすじを引用するとこんな感じ。

翼をもつ美しい妖精のような種族が住む銀河辺境の惑星ダミエム。
連邦行政官のコーリーとその夫で副行政官のキップ、医師バラムの三人は、ダミエム人を保護するため駐在していた。そこへ<殺された星>のもたらす壮麗な光を見物しようと観光客がやってくるが……

これだけだと何がなにやら、なのでもう少し補足。
<殺された星>というのはとある悲劇的な事件によってノヴァ化した星のことで、光とはすなわちそのノヴァ光やそれに付随する諸々の現象がダミエムの星域に到達→通過するときに見られる光ということになります。言うまでもなく、光が星ぼしの間を進むスピードには限界がありますから、ある程度昔の事件でもダミエムにその光が到達するまでには時間があるわけで、この世界ではそれが観光の対象になるようなイベントであった、ということですね。
もっとも、ダミエムという星もまた過去に悲劇的な事件を抱えていました。
その事件とは――

冒頭はこんな感じで進んでいきます。

読み終わってまず思ったのは……失礼ながら「これなんてエロゲ?」でした。
キッズ・ポルノ要素をふんだんに含む人気番組の制作者とその年若い俳優たち――銀河系規模のネットワークにおける人気コンテンツ。
半身不随の妹と感覚を共有する美しい令嬢――妹に感覚を与え続けるため誘惑者となることも辞さない女性。
とある大国の王子――わずか12歳にして達観し全てに精通しようとする少年。
宇宙船の女性士官――父親の影を常に追い続ける少女。
そして彼女を前に懊悩する医師。
ちょっとあげただけでこんな感じでネタが沢山。これ以外にもまあいろんな意味で魅力的なガジェットが一杯ですが、まあSFネタの最たるものはダミエム人と彼等の抱える秘密でしょう。
どれもが簡単にふくらませて転用でき、また実際に既に転用もされてきたであろうネタではありませんかね。
(ダミエム人についてはネタバレゆえここでは語れませんが)
まあ無論エロゲに限らず、この作品に惜しげもなく投入されている魅力的なガジェットが過去20年の間で、好き者なSF系のクリエイターのインスピレーションの源……悪い言い方をすればパクリ元になってきたのは間違いありません。コードウェイナー・スミスの使った用語や世界観、ガジェットがエヴァなどに利用され再構成されて別の意味を付加されていったように、ティプトリーもまた現世代のSF好きなクリエイターたちには大きな影響力を持っているのは知られた事実ですが、この作品に限らず、70年代くらいまでのSF作品の多くが今の感覚で捉えなおされ、新たな価値を付加されているのもまた我々がすでに知るところでもあります。
おそらく我々は、すでにネタ元よりその影響下にある作品により多くの影響を受けていて。
そして、より尖鋭的に、より極端になっていったそれらの作品をより好ましく思うようになっているのでしょう。
ダミエムの駐在所という閉鎖的環境で起こる事件を解決する、というプロットと解決のための手段がすこぶるADV的な構造を持っていることもあり、この物語は随所でちょっと前のSF系アドベンチャーゲーム(無論、エロゲ含む)を思い出させてくれます。最も、そのイメージの鮮烈さは紛れもなくオリジネイターのものですし、途中の残酷極まりない視点もほろ苦いハッピーエンドもこの作家にしか書きえぬものではあるのですが。

私にとってはおそらく、読むのが遅すぎた作品、なのかもしれません。
ここにあるのはもはや歪んだ未来のお話ではなく――同じくらい、あるいはそれ以上に歪んだ現在との同期でしかありません。80年代に読んでいたとすれば嫌悪と同時に鳥肌が立つような感動もあっただろうプロットが、今となってはさほどの嫌悪無しに読めてしまう――そう、我々はもっと酷い世界を知っている、と。
そう思わせてしまうところが哀しくもあり、20年後になってもまだ現在形で読めることが凄いのかな、とも思います。

描写は丁寧ですが、わたしが冒頭に挙げたようなガジェットから想像されるような扇情的な描写は希薄です。無いというわけではないのですが、ネタバレを伴うのでこれ以上は書けません。後のクリエイター(特に18禁系の)は、希薄な部分を自らの想像力で補うことで違うものを生み出そうとした、ともいえましょう。
故に、今の読者が読むとかえって冗長、かつツッコミが足りないと思う文章かもしれませんね。実際、展開に中だるみというか、作者が長さをもてあましているような感じはなくもないです。ティプトリーが生涯2作しか長編を書かなかった、というのはやはりある程度得手不得手があったのかもしれません。それでも、ダミエムのエキゾチックな描写はヴァンスの「魔王子シリーズ」辺りを思わせるなあ、と思いながら読みましたが、後で考えると訳者はどちらも朝倉さんでした。訳者の力量というのはこういう作品では大切なのだなあと改めて思わされますね。
この作品でも朝倉氏は良い仕事をしていると思います。

……ちなみに、一番活躍するのは医師バラムです。中年ですが良い男ですな。
もしこの作品をエロゲにしたらプリンス・パオと並ぶ主人公候補です(違

Su-37さんやゆーいちさんが読んだらどんな感想を書かれるか読んでみたい気も致しますが、如何なものでしょうかね^^;
輝くもの天より墜ち (ハヤカワ文庫 SF テ 3-6) (ハヤカワ文庫SF)

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コメント(2件)

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とりあえずぽちっとしてみました(笑)
ゆーいち
2007/08/07 14:59
有難うございます^^;
気に入っていただけると良いのですが、途中で投げたくなる場面もあるやもしれませぬ。ネタバレなので詳しくはあれですが、問題の解決方法もとあるゲームを思い出させたりしたりしなかったり。
紅茶奴隷
2007/08/08 20:43

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