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zoom RSS 雑記「境界線上の居心地の悪さ」

<<   作成日時 : 2007/12/10 23:50   >>

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私の男 桜庭一樹

「GOSICK」「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」などで知られる作家の一般向け小説……なのですが。
北海道が舞台ということもあり、印象としては一躍メジャーになった「赤朽葉家の伝説」より「七竈〜」に近い世界観なのかな、と思いました。ただ、ターゲットとしている読者層は明らかにもう少し上の世代、「赤朽葉〜」と同じ層でしょう。
個人的な印象として、彼女の作品はどれも近親相姦的なイメージが背景に充溢しているのですが、その中でも常に「父親と娘」というのはそうした匂いを濃厚に感じさせていました。
「荒野の恋」「砂糖菓子」「少女には向かない職業」等々。
「砂糖菓子」は真逆じゃないか、と言う人もいそうですが、あの父子の関係が単なる虐待者と被虐者の関係だけで語れないのは読んだ人なら容易く了解できることでしょう。
で、これはもろにそれを扱った作品ではないかと。
正直、町田ひらくが女性視点で小説書いたらこんなになるんじゃないか、というお話でした。
何処までも救いがなくて痛い。
しかし同時に、これが「衝撃の問題作!」などというオビとともに売られていると言う事実は、世間一般のモラリティがこうしたテーマに抱く嫌悪というのを良く示していると感じました。
作者はたぶん問題作とはあんま思ってないんじゃないかと。そりゃポルノグラフィ並の扇情的なねちっこい描写もありますけど、それはその世界においては逆にありがちというかむしろ温い描写なわけで。それが女性視点で描かれているという点ではまあ、今まであまり無かった作品なのかもしれないですけどね。でもフェミニズム的視点はむしろ希薄な作品だと思います。
個人的に、インセスト・タブーは親からの虐待を許さないという視点から見ると当然あってしかるべきものだと思います。その意味において本作の親は許されざる罪を最初から負っているといえるでしょう。しかし、本作において娘が親に抱く愛情を、あくまで刷り込みによる歪んだ間違ったものととらえるか、あるいは書かれたままに受容してしまえるのか。
後者の視点で物語を読んでしまう人間にとって、作品内におけるモラリティの表出たる被害者たちはまた同時に加害者でもあるのだと思ってしまいます。モラル的には確かに正義でありつつも、被害者達はどこまでも二人の世界にとっては破壊者であり邪魔者でしかありません。
最後の刻、醜くなった昔の知人を蹴りつける主人公に共感できるか出来ないか。
共感することは勿論世間一般のモラルからすれば完璧に間違っているのでしょう。
ですけど、まあ、ね。
間違ってたって、閉じた世界で幸せになることくらいはいいんじゃないかなと。
そう私は思いますよ。

まあ、そういう男側からの甘い視点を最後結局切って捨てたところに、作者の女性としての意志は現れているのかもしれませんけどね。

これは18禁ゲーム・漫画、あるいはポルノグラフィに親しんでいるような人間にとっては問題作でもなんでもありません。
フェミニズムも幼児虐待への反対も、ここから無理に読み取る必要はありません。
ただの痛くて、悲しい犯罪者たちの恋物語です。
でも、それでいいのだと思います。

例によってとりとめのない感想ですが、こんなところで。
私の男

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