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zoom RSS 雑記「理想を語らねばならないのは不幸だけど、語れなくなったらもっと不幸」

<<   作成日時 : 2008/01/20 22:16   >>

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図書館革命 有川浩

図書館シリーズ完結編。2巻読了後積んでたのを「危機」とまとめて消化。
間違いなく面白かったのだけど、「空の中」「海の底」で受けた印象を拭い去るには至らず。
一言で言ってしまえばたぶん「いろんなものが軽い」。
だが、それだけならたぶんこんなもやもやした読後感を覚えることはなかったと思う。
大体にして、ラノベとして読んでも有川氏の作品は何故か微妙なのだ。
面白いけど喰い足りない。けど切り捨てるには勿体ない。
考えてみるに、どの作品も主人公側に立つ人間がみんな「いい人」すぎるのが理由なのかも知れない。正直パトレイバーの世界ですら、こんなにはっきりと色分けされては居なかったと思う。
テーマはどの巻もそれぞれ重いのだけど、図書隊の性格上どのテーマについても対症療法しか描き得ない。それは設定上仕方ないことなのだろう。
しかし結果としては、それがこの作品自体が「腰が引けてるんじゃないの?」と言われかねないような印象を(少なくとも私には)与えてしまっている、のだと思う。
また、主人公側が「普通にいい人」ばかり故、最初からアングラ的なものについてはどうなの?という視点がどうしても抜け落ちているような気もする。
だからなのか。彼らが高らかに謳う表現の自由は無意識にフェミニズム的な「綺麗さ」を指向しているようで、一見地べたにも目配りしているようで、だけどそこには切迫感が無い。
「叩かれてはいけないもの」を「叩かれていいはずがない」と持ち上げることには熱心でも、「今現に叩かれているもの」を「存在していい」と言い切る強さが無い。
恐らく、有川氏自身が性格の良い人なんだろうなあ、と思う。前述の問題にしても、気にならない人は全く気にならないだろう。それは主張としてではなく、作者自身がそう普段感じている視点が結局ナマでひょっこり顔を出している、と言うことに過ぎないのだろうから。

……と、何だかんだと書いてみましたがそれでも私はこの作品が好きです。
微妙なテーマを扱いつつ、誰からも非難されない形で一流のエンタ作品に仕上げ、なおかつ本読みにどんな形であれ引っかかりを残すことに成功した、という点で素晴らしい作品だと思います。
現実はメディア良化委員会などよりずっと狡猾で厚顔だし、無抵抗者の会よりさらに狂信的で愚かだと思いますけど、それでもディストピアの中のユートピアである図書隊を描くことで一つの「理想のありかた」を示した有川氏には感謝、ですね。


ここからは蛇足。
私の中では有川氏は森博嗣氏や福井晴敏氏と(何故か)同じカテゴリーに入っています。
作風が特に似てるわけでもない、というかむしろ全く違うとは思いますけどね。有川氏の視点は間違いなく女性ならではのものですし。
ただ、私が勝手に共通点を探すとすれば、三人とも作家として「欠落した感じ」が無いということ、でしょうか?何か三人とも充実している方なのだな、と作品を読んでいて思います。
わざと悪い言い方をすれば、飢えが感じられない作家。
充実した一人の人間であって、同時に優れた作家であること。世間的には当たり前の話なんでしょうけどね。
でも私はガツガツしてる作家、「何か」に飢えた作家、色々なものが足りなくて、それでも書かずに居られない作家……そういった方により強く惹かれてしまうようです。
図書館革命

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