雑記「花散る午後に」

ゼウスガーデン衰亡史 小林恭二

http://www5.ocn.ne.jp/~misuzu/index.html様で
20日付けでかにしのレビューがアップされておりますね。
中々興味深く拝見させていただいたのですが、最後にこの本に触れられていたのでこちらでも取り上げてみようかな、と。
出版当時は筒井康隆にけっこうな賞賛を受けたりもしたので、名前を知っている方はそれなりにいらっしゃると思いますが、かにしの好きでも読んだことあるよー、という方は意外と少ないのではないかと思います。
極々簡単にまとめれば、巨大テーマパークの盛衰を「ローマ帝国衰亡史」に重ね合わせることによって当時の「今其処にある未来」を幻視し、カラフルなガジェットを満載した虚構の中に封じ込めようとした小説、ということになりましょうか。
今読んでもそのイマジネーションの奔流はいささかも輝きを失っていません。今のテクノロジーならこれは実現可能だろう、というアトラクションやテーマイベントたる「フェスト」の描写は、作者の脳内ヴィジョンがいかに時代を先取りしていたかを証明するものでもあります。
しかし何よりこの本が良いのは、そうしたガジェットを押し出しつつも芯を持った物語であり歴史小説であり娯楽小説であることを並立させているというところでしょう。
筒井康隆の「虚航船団」が好きな人、そしてローマ史のような歴史物語を愛する人にオススメしたい一冊。反面、高尚な思想性などを期待する方にはあまりオススメできませんが。
むしろ歴史の中ではいかなる思想もまた消費されていくモノの一つにすぎない、という感覚に共感できる方であれば、おそらくこの本を楽しめるのではないかと思います。
今ハルキ文庫から出ている版はスピンオフ短編である「ゼウスガーデンの秋」も収録した完全版。気が向いた方はお試しあれ。

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