化物語SS「するがディテクティヴ 前編」

化物語SS。今回は前編ということで。

「するがディテクティヴ」

私の名前は神原駿河。
得意技はBダッシュだ。
現在、百合フレンド絶賛募集中だ。
うん、嘘だ。
――現実的なところでガールフレンドは随時募集中だ。
BL小説について語り会えるなら容姿年齢は問わない。

「という自己紹介からブログなるものを始めてみたのだが、阿良々木先輩はどう思う?」
どう思うと言われても――自己紹介としてはややチャレンジングすぎると思うが。
「お前の世間的なイメージと乖離していて誤解を招くと思うので速やかに直すべきだな……あと、お前の勝手と言えば勝手なんだが、ブログに本名を晒すのはおすすめしないぞ」
「む、そうなのか?」
ふむふむ、と律儀にメモる僕の後輩は今年受験生である。
デートのはずが何故か戦場ヶ原に急に予定が入ってしまった今日。
奴は代役としてこいつを当然のように送り込んできた。
「好きに嬲っても襲ってもいいわよ。後で全て復唱させるから」
「いや、嬲らないし襲わないから」
例によってそんな会話を経てではあるが、まあ僕としても神原と会うこと自体は問題ではない。
そもそも神原自身が一向に迷惑とも感じていないらしいのが救いというかなんというか。
そんなわけで、僕たちはゲーセンに行った後ミスタードーナツで時間を潰している。
「しかし、受験生のお前にブログをやる暇なんてあるのか?」
「ふむ。先輩が私の学業成績を心配してくれるのは真に有り難いのだが、今までバスケ部と勉学を曲がりなりにも両立してきた私だ。この程度のことはどうということもない」
それもそうか。
「ただ、更新内容を考えるのに四時間、書き込むのに一時間かかるのは困ったものだが」
「一日でどんだけ書いてんだよ!」
「んー?昨日は五万行くらい……だったかな」
「もうちょっと一日の量をセーブしろ!読むほうだって大変だよ!」
大体五時間もブログにかけてたらどう考えても勉学との両立に苦労するだろうが。
「ところで阿良々木先輩。そのブログの件なのだが、ちょっと相談がある」
「何だよ、相談って」
「うむ、実はブログ宛にこんなメールが届いていたのだ」
と、神原はメールをプリントアウトしたものを見せる。
題名は「あなたに素敵なお話をご紹介します」。
「……スパムメールじゃないのか?」
「……精子のように無駄に多いからスパムというのか?」
「女の子が精子とか日常会話で使うな!」
そもそも語源も綴りも違うし。
「むう。いつも思うのだが、阿良々木先輩は女子に幻想を持ちすぎではないか。精子とか卵子ぐらい、生物の授業でも使うだろうに」
「今は授業中じゃないし、ここはミスタードーナツだ」
「そういえば、今日は忍ちゃんはいるのか?」
「ああ。今は影の中で寝てるよ。帰ったらおすそ分けだな」
忍の分はもう買ってある。ドーナツを食べているときは機嫌も良いようなので、僕としては定期的に買わざるを得ない。
相変わらず、笑っても話してもくれないけれど――今はまあ、それで良いのだと思う。
「成程、先輩は上手くやっているのだな」
「――お前はどうなんだよ」
「あれからは何も。腕にも変わりはない。二十歳まではこのままだろうな」
「で、メールの話に戻るけど、結局素敵な話って何だ?誰だよこれ書いたの」
「うむ、メールをくれたのは中学校の後輩なのだ。バスケット部で、最近妙な事件が起こったらしいのでな」
「それで何故お前に相談を?」
「恋の悩み相談、及びこんな怪談があるんですよ、と言うお知らせの様な物ではないかと思うのだが」
ちなみにBLの相談ではないぞ、と神原は真顔で言う。
「そんな相談は聞きたくねえよ……で?」
「うむ、恋の相談はおいといて、怪談のほうを簡単にまとめると、こうだな――『体育倉庫に幽霊が出る』」
神原がメールの内容をかいつまんで話す中、僕も紙を見ながら頭を整理してみた。
――去年の夏、体育倉庫で大人の階段を二人で昇っていたカップルが体育教師に見つかって、こっぴどく怒られたらしい。
退学こそ無かったものの、片方は転校させられ、関係もそこで破綻した、と。
「ふーん……それで?当然、それだけで終わりじゃないんだろ?」
「うむ。彼等の片方――転校したほうが、噂によると卒業後自殺したらしくてな。彼女がバスケット部だったらしい」
――それから、幽霊が出るようになったのだという。
すすり泣く、少女の幽霊が。
「その二人を見つけた体育教師って、まだ居るのか?」
「どうだろう?メールには書かれていなかったが……まあ、まだ居るとすれば、その人に祟っているのかもしれないな」
「……お前、この話信じるの?」
「だって、その――先輩には、見えるのだろう?」
――幽霊。
まあ、確かにそっち系の知り合いが居ないこともないが。
あれは祟る霊じゃないけれど。
しかし――そうなると、神原の相談というのは。
「で、その……先輩の知り合いの――八九寺ちゃん、だったか。彼女なら、もしそこに本当に霊がいれば、解るのではないかと思って」
――もし霊が本当にいるなら、話を聞いてやりたいと思った。
神原はそう言う。
……僕は思う――忍野の言葉に従うなら、関わりを持っている人間には、それは見える。
僕も神原も、無論八九寺も、そういったものと既に関わってしまっている。
だからこそ、なんとかしてやりたい――神原はそう思っているらしい。
――それは、ちょっと前までの僕のようでもあり。
無論、今の僕にしたってさほど変わりはしないわけで。
「――で、僕に八九寺とのつなぎを頼みたいってことか」
「ああ。OBでない阿良々木先輩が中学校に行くのは色々不都合もあるだろうが、私なら問題ないから」
神原が八九寺と一緒に行けば良い。
八九寺はたぶん、普通の人間には見えないままだと思うから、神原と同行する分には問題ないだろう。
「――そうすると、問題は八九寺とお前が話すことが出来るかどうか、かな」
いちいち僕が通訳に入るのでは意味がないし。
最も、神原のその腕が残っている内は多分大丈夫ではないか、と僕は漠然と思った。
「うむ――その辺が心配なので、とりあえず事前に会いたいのだ。大体、先輩の話によると八九寺ちゃんは大層可愛いと言うではないか」
「……最後の一言でお前が物凄く不純に思えてきたんだが」
「何を言う阿良々木先輩。可愛い小学生を愛でたいと思うほど純粋な欲望などこの世に無いぞ!」
「涎を垂らしそうな笑顔で危険すぎる台詞を爽やかに断言するな!」
ひょっとして、一番大丈夫じゃないのは八九寺の貞操なのではないだろうか。
本当にこいつを曲りなりにも純粋な小学生である八九寺に紹介しても良いのだろうか……
「不安そうな顔をするな、先輩。私は子供の扱い方は心得ている。いや、熟知しているといっても良い」
「この文脈でそう断言されると余計不安になるんだが……」

――ともかく、そんなわけで。
これから書かれるのは、神原駿河と八九寺真宵の――ちょっとした物語だ。


後編はそのうちに。

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