化物語SS「するがディテクティヴ 中編」

アニメ化決定記念……なのかな?かな?
終わんなかったです。後編はまたいずれ。


――さて。
八九寺真宵をまずは捕獲しなくてはいけないのだが、相手は言わば希少生物である。
ツチノコ並み……は言い過ぎとしても、本来ならワシントン条約で保護されても不思議のない代物だ。
「最近、通学路で会うことが多いんだけど……会いたいと思う日には中々会えないんだよな……」
「成程、八九寺ちゃんは奥床しい子なのだな」
「いや、その表現は正しくないな」
むしろおかしい子だと表現すべきだろう。
そもそも今日だっておかしいのだ。
この僕が会いたがっているのに姿を現さないなんて。
「しかしそう聞くとますます会いたくなるなあ……じゅる」
「擬音を口にするな……って本当によだれがっ?」
自分で言っただけだと思っていたのに!
じゅる、なんて音、日常では殆ど聴いたこと無いぞ?
「仕方ないではないか。こんなに美味しい――いや、嬉しい状況はそうあるものではないぞ、先輩」
「言い換えてもまだ微妙な表現だぞ、神原」
「阿良々木先輩の意見は有り難く頂戴するが、私にも譲れぬ一線がある。私は常に、心に少女と夢を抱きしめていたいのだ」
「お前の年齢設定と乖離したネタを使うのはどうかと思うんだ」
あと、そんな線はとっとと人に譲ってしまえ。
「ふふふ……少女を見守っていたい……影日向に咲く花のように……」
どうやら神原の欲望はこないだから順調に増進していたようだ。
何気に臨界点が近いような気がしないでもない。
どうしよう。
このままでは、八九寺をみすみす虎口に放り込むことになるのではないだろうか。
そもそも、この路線で突っ走っても大丈夫なのか?
主に年齢制限的な意味で。
と、そんな馬鹿なことを考えていた僕の視界に、ランドセルを背負ったツインテールが映る。
とことこと壁際を歩くその後ろ姿――うん、見間違えようもない。
目標を確認。
「ああ、結局迷ってる内に発見しちゃった……」
「先輩、何か言ったか?」
まあ仕方ない。
僕はツインテールを指差して、神原に無言で頷く。
(神原――ちょっと静かにしていてくれ)
この後輩、こういうことでの飲み込みは早い。
輝くような歯を見せつつ、無言で親指を立ててきた。
いや、その微笑はいらないから。
――しかし、どうしよう。
以前、浮かれた僕は大失敗をやらかしているのだ。
また驚かせてしまっては可哀想だし。
――そうだな。今度は静かに近づいて、優しいお兄さんらしく振舞おう、うん。
そう考えた僕は――ゆっくり音を立てずに、八九寺の背後に接近すると。
「ふははははは!八九寺はいつも可愛いなあっ!ほれほれほれ高い高いたかーいっ!」
腋の下に両手を入れて抱きすくめ、一気に持ち上げた。
「うきゃあああああああああッ!?」
一瞬でパニックに陥った八九寺は振り返ることも出来ず、ただ足をばたばたさせる。
「ふはははははっ!この状態では何も出来まい!ほれほれほれくすぐっちまうぞ可愛いなこの野郎!」
「ふぎゃああああああああっ!ひあっ!ひゃあっ!」
後ろを蹴る――蹴る、蹴る。さらに蹴る。
しかし、宙に浮いた状態で、後方に力の入った蹴りが放てるわけもない。
それに気付いた八九寺は僕の腹を蹴って何とか逃れようとするが、どっこいそんなことで獲物を逃す僕ではない。
抱きすくめたまま両手指をわきわきさせて八九寺の薄い脇腹をさわさわと――
「ふえええええええっ――!」
そうだ。僕はここから更に――と、脳内のギアが上がりかけた、その時。
ぱしん。
後ろから頭をはたかれた。
割りと痛かった。
「――あれ?」
振り返ると、神原が実に味のある表情で僕を見ていた。
「阿良々木先輩。私は先輩を敬愛して病まぬ者だが――さすがにそれは人として問題があると思うのだ」
「――えーと」
はっ、と我に返る。
「………………」
ゆっくりと、八九寺を地面に下ろしてやった。
「ふーっ!ふーっ!ふーっ!」
ああ、こないだと同じ状態に退化している。
「えーと、その、何だ……ごめんなさい」
「うむ」
神原が大きく頷く。
「いかに劣情に駆られたからといって、抵抗も出来ない少女を手にかけるなど言語道断」
後輩に諭されちゃった……
手にかけてまではいない筈だけど、とてもそんな反論が出来る状況では無かった。
普段は僕より確実にエロいことを妄想しているはずの神原に諭されちゃった。
「せめて、ちゃんと相手の了承を得てからにすべきだ」
「いや――その発言にはそれはそれで問題があると思うぞ?」
さて、それはともかく、改めて。
「――よう、八九寺」
僕の挨拶に、八九寺の眼の色が段々と落ち着いていく。
王蟲で言えば赤から青に変わっていく感じ。
「――やあ、これは粗々木さんじゃないですか」
「発音は合ってるのに何か間違ってる気がするのは何故だろうな……」
なんかざらざらしてる感じ。
しかし、今日に限っては間違ってるとも言い難い。
またやっちゃった。
我を忘れてしまった。
ごめんなさい。
「ふむ?――そこの貴方は、宅急動の人ですね?」
「なんの事かな?しかし……しかし。先輩の言ったとおりだな……本当に可愛いなあ!!」
絶叫するほどのことではないと思うのだが、神原は全身全霊で喜びを表現していた。
嗚呼、やっぱり。こういう奴だよなあ。
あまりの反応に八九寺がびくびくっ、と後ずさるのにも頓着せず、神原はうっとりしていた。
「かいぐりかいぐりしたい……もふもふしたい……ああ、神はなんと残酷なのだ……こんなかわいい子が幽霊だなんて……」
言ってることは正しいが動機が正しくない奴だった。
まあ、予想通りの展開である。
「神原、涎くらいはふけよ……」
「あらりゃぎさん……わたし、なにか微妙に悪寒がするのですが」
「ああ、風邪じゃないか?」
ここはさらっと流したいところなんだけどなあ。
「そんな訳がないでしょう。明らかにこの方は不浄な瘴気を放っています」
「お前、瘴気とか感じるのか?」
「いえ、言ってみただけです。オーラとか瘴気とか、見えたら格好良いじゃないですか」
だよなあ。
現実は格好良くない。
「そもそも、わたしは風邪なんてひきません。健康優良児として表彰されたこともあるのですよ?」
「ほうほう、いったい誰が表彰してくれるんだ?」
神様か?そんなのが居るならちょっと詳しく知りたい気はする。
二階級特進するぐらいだから、階級を定めてる奴は少なくともいるってことだよな――
「決まってるじゃないですか、わたしです」
……自分で自分を表彰していた。
二階級特進もただの自己申告かもしれない。
「ほら、マラソン選手が良く『自分で自分を褒めてあげたい』と言うではないですか。それと同じです」
「ほう、ならばお前は42.195キロを走ったことがあるのか?」
「無いですが何か?無かったら人は自分を褒めてはいけないと阿螺羅蟻酸は言うのですか」
「また間違った字で呼ばれてる気がするぞ」
しかもすっぱくて鼻につく危険な感じだ。
無駄に知能の高いオウムに苗字を呼ばれてる気分。
八九寺の前世は鳥だったのかもしれない。
まあ基本鳥頭だしなあ。
「むう、阿良々木先輩。人を鳥獣に例えるのは感心しないな」
呟いてもいないのに神原に突っ込まれた!
「お前はやっぱりテレパシストなのか!?そうなんだな?」
人が敢えて脳内で留めている考えを考え無しに喋るな。
「私もやはり、脳が猿並みとかいわれたら傷つく。いくらこの腕が猿とはいえ」
「……いや、そこまで言ってないから安心しろ」
「――それはそうと、男性と言うのは馬並みといわれると喜ぶそうだが本当か?」
「脈絡なく下ネタに持っていくな!ちなみに喜ばないし普通の男は馬並みじゃないから!」
「ほう――では阿良々木先輩は例えると何並みなのだろうなあ?」
「しまった!いつの間にかリサーチされているっ!?」
「ふふふふふ……知りたいなあ……ああ、先輩が忍野さんと絡み合っている光景を想像すると……ふふふ……」
「頼むからそれだけは想像しないでー!」
しかもそれを僕の前で喋らないでー!
それはセカンドレイプ並みに酷いセクハラだ!
「……ありゃりゃぎさん。この方はいささか脳が可愛そうな方なのですか?」
「……字、間違ってるからな」
いや、ある意味正しいのか。
あと、お前が言うな。



――と言うわけで、まだ続いちゃいます。

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