雑記「荒野への入り口」


此よりは荒野 (ガガガ文庫)
小学館
水無神 知宏

Amazonアソシエイト by ウェブリブログ



 ゲームシナリオライターとして活躍していた水無神知宏氏の新作。
 待望の新作、と言うべきかもしれません。
 何しろ、「鋼鉄の虹」ノベライズ「装甲戦闘猟兵の哀歌」が出たのは1994年。
 小説家としての復帰は実に14年ぶりですよサンタマリア。
 挿絵が伊藤明弘だったことに象徴されるように、「装甲~」はガンアクション・ミリタリー系のライトノベルとして良く出来た作品でしたが、今回はガンアクションの部分を前面に出しつつも幽鬼や狼男の跋扈する異形の西部が舞台。
 似てるかな?という作風を思い浮かべると、すぐ出てくるのは前述伊藤明弘の「ベル・スタア強盗団」あるいは「ウィルダネス」(漫画ですが)。また、魔物の扱いなどにおいては菊地秀行未完の名作「ウエスタン武芸帳」などを思い起こさせる作品かもしれません。
 個人的には大昔のPCゲー「JOKER」をちょっと思い出したりもしましたが――まあそれはさておき。
 甘っちょろい若造であるアランが賞金稼ぎ、ステラによって一人前のガンマンに成長していく過程が非常に丁寧に描かれています。この辺は西部劇のお約束な感じでもありますが、「ベル・スタア」や「ブラクラ」あたりを想像してしまうと、前半はややスピード感に欠けると思う人もいるかも。この辺ブラクラのノベライズを担当した虚淵玄などとは作風の違いを感じさせますね。勢いよりはあくまで世界観重視という印象です。しかし、段々雰囲気に慣れてくる後半になればなるほど、水無神氏ならではの細部にこだわった描写が光る――そんな印象を受けました。
 キャラ的にはステラもいいのですが、サンディとジョゼのコンビが上手いことガス抜き役をしてくれていてほっとしましたね。この二人がいなかったり、途中退場したりしてたらもっと救いの無い話になっていたかも。
 あと、アランと簡単に馴れ合おうとしないステラを見てると何となく「JOKER」のブランカを思い出したり。はいはい年寄り年寄り。
 さておき――お話自体はまっとうすぎるほどの成長物語・復讐譚故、最近のケレンや鬱展開の多い作品に慣れている読者にはやや刺激が少なめと感じられるかもしれません。しかし、復帰作としては充分すぎるほどの密度を備えた作品と思いますので、一人でも多くの人に読んで欲しいなーと思っています。ガンアクションや西部劇が好きな人なら、まず失望することはないでしょう。
 出来れば続編で、この世界観をより深く追求したお話が読んでみたいものですね。




この記事へのコメント

Katana
2008年11月25日 11:13
「JOKER」ですか懐かしいですねぇ。
ワイルドとブランカは良いコンビでしたね。
林家志弦さんコミカライズしてくれませんかね?(笑)
紅茶
2008年11月25日 19:27
やー、「JOKER」で反応してくれる人がいて嬉しいですw
林家さんはもう18禁では書いてくれないんじゃないかなー><
吸血鬼ものということでは「シスターレッド」書いちゃってますしね。
WINでリメイクしてくれれば言うことないんですけど。
Katana
2008年11月25日 21:23
「かにしの」分補給で良く見させて頂いておりました(笑)
「JOKER」のあまりの懐かしさに勢いでコメントを、、、(笑)
WINでリメイク、、、して欲しいですねぇ
でも、1・2足してもボリューム的にどうなんでしょう?(涙)

紅茶
2008年11月25日 23:11
ありがとうございます>かにしの
確かにボリュームは今の感覚だと少ないですね。
出るなら「コズミック・サイコ」や「My Eyes」と一緒でもいいよ!
……むり?(´・ω・`)

この記事へのトラックバック